Lover’s knot

2018年07月

手術は数時間に及ぶという。




ひと通りの検査を受け

明日、緊急手術をすることに決まった。



本人は緊張しているようだったが、

私はなんとも思わなかった。



心配もしていない。







手術の内容はごく一般に行われるものと同様で、

成功率も99%を超えるとの医師からの説明を聞き、

安心しきっていた。







手術当日、

付き添いのため朝早くから病院へ向かった。




ハンドルを握りながら、

これまでの事が脳裏をよぎる。



やはり思い出すのは

幸せだったときのことではなく、

浮気が発覚してからのことだった。






当時、私の何がいけなかったのかと

問い質したこともあった。




夫は、

「お前が悪いわけじゃない」

と言った。






だから尚更納得できない。


それほど相手に惹かれたということか。


きっと同じ会社の若い娘だろう。


同じ部署だったのだろう。


よくある話だ。


付き添いだって、そのお相手に頼めばいいのに。


きっとそのコは心配してるでしょうから。









そんな考えを巡らせていると涙が溢れた。



なぜこんなことになってしまったのか。

誠実だけが取り柄のような人だったのに。





私が人一倍嫉妬深いと知っていながら、

どうしてなのか。


何度も何度も心の中で叫んだ。






だけど、何度もそう叫んでも


もうあの頃のようには戻れない。






入院の手続きを済ませて病室へ戻る。


すでに多くの検査器具が繋がれ、

絶対安静…との指示。



意識もあり、見た目もほとんど変わらないが

いつ発作が起きるか分からない状態だと言う。





しばらく経ち、

別の場所で検査をするので移動するときも

車椅子が用意された。




そんなに悪いのか…

見た目がいつも通りだし

受け答えも通常通りにできているので

あまり実感がない。







検査中、定期的に聞こえてくる機械音は

夫の鼓動を連想させた。




いまここで

機械音が止まってしまってもいいと思った。





冷たいとか薄情だとか言われたって構わない。

もうそれくらいの存在でしかない。




時間が経ち過ぎた。




もっと早く、こうなる前に離婚しておけば良かった

のにとさえと思った。







夫の浮気が発覚してからすでに5年が過ぎていた。


当時、あっさりと事実だと認め

上っ面だけの謝罪を受けた。



そのうえ

「あと2年待ってほしい」

と、謎の要求…






浮気した上にそんなことを言われては

許せるわけがない。









しおらしく謝り、二度としないからとか

一生かけて償うとか

産まれ変わっても一緒になりたいとか

嘘でもいいから言ってくれたなら

こんな結果にはならなかったはず





嘘でもいいから。











神様を今まで信じてきたのかと言われれば、

違うと答えるかもしれない。


けれども都合の良い時には

いわゆる神頼みを数々と行なってきた。


それがいけなかったのか。




その仕打ちにしてはタイミングが良すぎる。





私はもう何年も前から夫に離婚を申し出ている。






でも、子供のことがあるので

今日まで引き延ばされている。





むしろ夫は離婚する気などないのかも知れない。





だけど私は限界。









先日アパートを契約したので

夫に別居を伝えるはずだった。






子供たちもだいぶ大きくなり

上の子はもうすぐ成人する。






そろそろ別居して

離婚調停を申し立てようとしていた矢先、

夫が入院した。



入院となると、これぞ夫婦と言わんばかりに

夫の身の廻りのことをしなければならない。



もう何年もそんな事はやっていないのに

入院する夫を

甲斐甲斐しく世話しなければならないなんて。






明日にでも別居したいと伝えようとしていたのに

神様はどうしてこんな試練を与えるのか。














先日、真ん中の子と買い物へ行った帰り





ママ!あれ見て!

と言うので、指差す方を見ると





1箇所だけ雲が虹色になっていた


ものすごく綺麗

でも不思議〜

初めて見た!








虹を見ると

いつも彼に写メを送る




今回も、彼に見せてあげる〜






このページのトップヘ